中学受験に合格して入学することができる学校には、それぞれ異なる特色がありますが、共学の受験校を選ぶときにチェックしたい項目の一つが「男女の定員がどう設定されているか」です。
この設定のされ方によって、入試の難易度が男女で大きく異なることもありますし、入学後の学校生活の雰囲気にも影響してきます。
定員設定の4パターン
共学校では学校ごとに男女の定員の設定方法が異なりますが、次の4つのパターンに大きくわけられます。
【① 男女一括(合計人数のみ設定)】
まず挙げられるのは、男女を分けずに「合計○名」とだけ定員を設けるパターンです。
たとえば青山学院横浜英和中には、A日程・B日程ともに男女合計の定員のみが設定されており、男女別の枠はありません[注1]。
成績順に合否を決めるため、2025年度A日程では合格者が男子26名・女子81名と大きく偏りました[注2]。
このパターンは志望者の傾向によって毎年の結果が変わり得ると言えます。
【② 男女別枠・同数】
続いて挙げられるのは、男子・女子それぞれに同じ人数の枠を設けるパターンです。
たとえば青山学院中等部の募集要項には「男女合わせて約140名」と記載されていますが[注3]、初等部からの内部進学者と外部受験の入学者を合わせた1学年の在籍者数が男女で同じになるよう設計されていて、募集人数もだいたい同数となっています。
このパターンでは、男女それぞれの偏差値はその学校を受験する各性別の学力レベルに依存するため、受験層が異なれば、偏差値にも差が生まれます。
【③ 男女別枠・異なる数】
それから、男女で異なる人数を募集しているパターンも挙げられますね。
このうちよく見られるのは、募集員数が女子よりも男子の方が多い設定です。
たとえば、慶應中等部や早稲田実業中等部がこのケースにあたり、慶應中等部は男子約120名・女子約50名[注4]、早稲田実業中等部は男子約70名・女子約40名[注5]を外部から募集してい ます。
結果として女子の入試倍率が男子より高くなりやすい構造と言えるでしょう。
【④ 原則成績順・男女比が大きく偏る場合は調整あり】
最後に挙げられるのは、原則として成績順に合否を決めながらも、男女比が極端に偏った場合には調整を行うパターンです。
たとえば渋谷教育学園渋谷中学はこのパターンで募集していて、公式サイトのQ&Aには「基本的には成績順で男女比を考えずに合格者を決定します。ただし、合格者の男女比バランスが6対4、7対3などの場合、男女の合否ラインに差をつけることもあります」と明記されています[注6]。
— ②と③のパターンは男女で偏差値が異なり得る設計です。
青山学院中等部、慶應中等部、早稲田実業中等部はすべて女子の方が偏差値が高い学校で、年や出し方によって多少異なりますが、四谷偏差値や日能研のR4偏差値でだいたい3ポイントほどの差となっています。
男女比で変わる校風
続いて、学校ごとの男女比について見ていきましょう。
どのような男女バランスであるかは、校風にも影響を与えているようです。
共学校の男女比を大きく分けると、次の4つのタイプに分類できます。
【① 男女同数に設定しているタイプ】
たとえば、青山学院中等部はこのタイプで、2025年4月時点の在校生の人数は381名ずつと、設計通りピッタリ同数になっているようです[注7]。
青山学院中等部はわたし(松下)の母校なのですが、在学当時を思い返すと、男女交互の席順や、男女同数の班や係など、同数であることを活かした設計がところどころ見られました。
計算された男女バランスは、数字がぴたりとそろっていることの心地よさとでも言えば良いのでしょうか、個人的には気に入っていたポイントです。
男女の交流の機会が多いからか、明るく華やかな校風からか、はたまた思春期前からの仲の良さが初等部から引き継がれていたからか、男女の仲が良い学校だと感じていました。
【② 男子がかなり多いタイプ】
たとえば、早稲田実業中等部や慶應中等部はこのタイプです。
男女比は早稲田実業が7:4、慶應中等部が3:2[注8][注9]くらいになっています。
口コミサイト「みんなの中学校情報」の早稲田実業中等部への投稿には「女子が少ない分、女子同士がとても仲良く、パワフルで文化祭などをぐいぐい引っ張る存在になっている」という声がありました[注10]。
男子の多い環境の中で、少数派の女子が存在感を発揮する機会が生まれやすいようですね。
共学校でありながら、どこか男子校のような「熱い」雰囲気を持っている学校が多いのでしょうか。
【③ 女子がかなり多いタイプ】
青山学院横浜英和中学がこのタイプに当てはまっています。
2018年に女子校から共学化した経緯もあり[注11]、スタジオキャンパスの矢野耕平先生が朝日eduaに寄稿された取材記事によると、2025年度の中学入学者は男子42名・女子134名で、在校生全体でも女子が約3倍を占めています[注12]。
同記事の中で同校の教頭・細田孝充先生は「男子の数が少ないからか、学年全体の男子同士で結束力が強くなる傾向がある。男子は肩身が狭いなんてことはなく、みんな元気にやっている」と述べられています。
男女比がどちらに偏っていても、少数派の側に連帯感が生まれることがあるようですね。
【④ おおむね同数のタイプ】
渋谷教育学園渋谷中学のように入試ポリシーとして均衡を保っている学校や、その他自然に男女比が均等に近くなっている学校もこのタイプです。
渋谷教育学園渋谷中学の口コミサイトには「共学で男女ともにあまり意識せず、自然な形で勉強できている」「共学で勉学を切磋琢磨するのはダイバーシティ・グローバル化という意味でも重要な経験だと感じている」という保護者の声があります[注13]。
男女の学力に差がなく、人数の差もなく、自然な形で一緒に学んでいる環境は、共学の理想形のひとつと言えるかもしれません。
このように、性別ごとの定員の設定方法も、実際の男女比も、学校によって大きく異なり、それによって校風にも違いが生まれています。また、性別によって入試難易度が変わる学校もあることには留意が必要ですね。
定員の設定は年度によって変わることもありますので、最新の募集要項は各校の公式サイトでご確認されることをおすすめします。
最後までお読みいただきありがとうございます。
少しでも中学受験の志望校選びのお役に立てたら嬉しいです。
■ 参考文献
[注1] 青山学院横浜英和中学 入試情報
https://www.yokohama-eiwa.ac.jp/chukou/examination/event.html
[注2] 青山学院横浜英和中学 過去の入試結果
https://www.yokohama-eiwa.ac.jp/chukou/examination/result.html
[注3] 青山学院中等部 入試要項
https://www.jh.aoyama.ed.jp/admission/guideline.html
[注4] 慶應義塾中等部 生徒募集
https://www.kgc.keio.ac.jp/nyusi.html
[注5] 早稲田実業学校中等部 募集要項・出願方法
https://www.wasedajg.ed.jp/junior/exam-s/application-s/
[注6] 渋谷教育学園渋谷中学 よくいただくご質問
https://www.shibushibu.jp/admission/faq.html
[注7] 青山学院中等部 生徒数・教職員数
https://www.jh.aoyama.ed.jp/introduction/number.html
[注8] 四谷大塚 早稲田実業学校中等部
https://www.yotsuyaotsuka.com/juken/data/?code=766
[注9] JS日本の学校 慶應義塾中等部
https://school.js88.com/scl_j/31130038
[注10] みんなの中学校情報 早稲田実業学校中等部 口コミ
https://www.minkou.jp/junior/school/review/7908/
[注11] ぽてん「進化を続ける青山学院横浜英和中学高等学校の新たな挑戦」
https://poten.jp/featured-schools/yokohama-eiwa/
[注12] 矢野耕平先生(スタジオキャンパス)取材記事 朝日edua
https://www.asahi.com/edua/article/16036131
[注13] みんなの中学校情報 渋谷教育学園渋谷中学 口コミ
https://www.minkou.jp/junior/school/review/7736/

