中学受験の国語で出題される語句には、小学生の日常生活ではなかなか出会わないような難しいものが、大変多いです。
たとえば、「普遍的」や「アイデンティティ」といった語は、小学生同士の会話に出てこないのはもちろん、学校の先生や習い事の先生が子どもに向けて使うこともほとんどありません。
わたし自身も中学受験を経験していますが、入試の国語のレベルは10年、20年と時が経つにつれて、非常に難化しています。
説明文を中心に、想定読者の年齢層が小学生よりもずっと上だろうと推測されるような本文が出題されることも多くなりました。
それに伴い、使われる語句の難易度も上がりましたし、哲学的・抽象的な内容のものなど、テーマ理解が難しいものもぐんと増えています。
このように、中学受験の国語では、相当レベルの高い文章や問題に太刀打ちする必要があります。
そのためには、語句の学習に力を入れなければなりません。
ここでお伝えしたいのは、学習の仕方には、「出題傾向」と「学習の流れ」に合わせた”コツ”があるということです。
皆様のご家庭でも、語句の学習をされているかと思います。
たとえば四谷系列の塾に通われて、テキスト『漢字とことば』のことばの学習を毎回しっかり行っている、という方。
テストで点数を取ることも、モチベーション維持・アップや組分けの観点からも大切ですし、家庭学習よりも緊張感のあるテストで解くこと、そこで間違えてしまったものを復習することは定着につながるので、そのような勉強ももちろん続けてください。
もし、できていないという方がいらっしゃったら(学習時間の使い方やレベルの観点から、ほかに優先すべき学習がある場合を除き)、ぜひテスト対策にも力を入れていただきたいと思います。
しかし、率直に申し上げて、それだけでは語句の学習は不十分です。
語句に関して、
・本文で使われている意味がわかる
・読解の穴埋め問題がわかる
・本文の内容が適切に言い換えられた選択肢を選べる(典型的な選択問題の構成で、こういった問題は非常に多いです)
・久しぶりに出題されても語彙知識の問題が解ける
など、テスト、ひいては入試問題での点数につながる学習にするためには、もう一段効果的な学習方法にする必要があります。
そこで、本記事では出題傾向から考えた語句を定着させるための7つの対策方法をお伝えします。
1.文脈の中での使われ方を知る
語句の意味を覚えるとき、意味だけを単体で暗記するのでは、実際にその語句がどのように使われているのかを習得することは難しいです。
英単語の学習をイメージしてください。
単語帳で語句と意味を覚えたからと言って、読解で正しく意味を理解したり、穴埋め問題で正解したりするには、もっと学習のステップをあがっていく必要がありますよね。
例文で学習したり、実際の長文の中での使い方に何度もふれたりして、覚えていくと思います。
国語の語句も同じです。
例文や文章の中の使われ方を確認して覚えると言葉のイメージがふくらみます。
「テキストの読解問題に出てきた言葉の意味を、1つ1つ確認している」というご家庭もあるかもしれません。
これはとても良い習慣なので、ぜひ続けてください。
本文の出現語句の意味の確認をこれまでされていた方も、これからしようという方も、次の手順に沿って取り組むのがおすすめです。
・読解問題を解くときに知らない言葉が出てきたら、まず四角で囲む。
・次に、前後の文脈や漢字の意味から「たぶんこういう意味だろうな」と推測してみる。
・そのうえで辞書で調べたり、大人に聞いたりして答え合わせをする。
この「推測してから確認する」という手順を踏むことで、言葉が記憶に残りやすくなります。
それだけでなく、文脈から意味を推測する力は読解力そのものの一部なので、語句学習を通じて読解力も同時に鍛えていることになるのです。
そして実は、この「どのような文脈でどのような言葉が使われるか」ということを覚えているかどうかが、テストの点数に直結します。
たとえば2026年3月の四谷大塚の組分けテストでは、「主張に対する[ ]をしていない」という空欄に当てはまる言葉を抜き出す問題がでてきました。
これの答えは「反論」です。
この記事を読んでくださっている保護者の皆様は、本文を読まなくても推測できたかもしれません。
生徒さんも、そのように推測した上で解けるのが理想なのです。
反対に、知らない言葉や表現を調べずそのままにしておくと、本文理解がおろそかになったままかもしれません。
ただし、読解の本文に出てきた言葉の意味を調べる学習のみでは、どうしても出会う語句や使われ方の数に限りがあります。
本文に出てきた語句の意味を調べることとあわせて、語句に特化した学習も行う必要があります。
それでは、語句に特化した学習はどのように進めていくと良いのか。
その点について、これから具体的な話をしていきます。
2.ジャンルごとに学習する
先ほど冒頭で、『漢字とことば』のみの学習では不十分だということをお話ししましたが、その教材の選び方にも少し注意が必要です。
教材にはそれぞれ相性があるので一概には言えませんが、個人的には、すべての語句が50音順に並んでいるものは、「辞書を読み物として読むのが好き!」というような生徒さん以外には、あまりおすすめしません。
(わたしは辞書を読むのは比較的好きな方で、食い入るように辞書のコラムを読んでいたことを覚えていて、今でもそのコラムの内容が焼き付いています。そんな辞書好きな子には50音順のものでも良いと思います。)
話を戻すと、なぜなら、50音順は辞書的に調べるときには便利ですが、覚えるための並び順としてはあまり意味がないからです。
ジャンル分けされている教材であっても、たとえば「和語」というジャンルの中が50音順に並んでいるだけだと、結局は関連のない言葉を1つずつ暗記していくことになってしまいます。
覚えやすいのは、意味や言葉のつながりで関連のある語句がまとまって並べられている教材です。
生徒の皆様・保護者様に勧めることが多いのが、井上秀和先生の『語彙力トレーニング1400+』シリーズです。
意味の近い言葉が隣り合って並べられているので、関連づけながら覚えやすい構成になっています。
「ジャンルごとの学習」という話とはズレますが、Stepを踏んで学習する構成は覚えやすいですし、その網羅性の高さから、腰を据えて取り組むものとして、非常に素晴らしい教材です。
こちらのシリーズ、「基礎編」もなかなか難しいので、ほとんどの生徒さんには、4・5年生はもちろん6年生であっても「基礎編」から始めることをおすすめしています。
多くの学校のだいたいの対策は、「基礎編」のみでも大方カバーできるのではないかと思います。
実際、筆者・松下が指導した生徒さんも皆様「基礎編」からスタートされ、発展編には入らず難関校に合格された方も多数いらっしゃいます。
ただし、国語が得意で、しっかりと得点源とされたい方や、語句の出題が難しい最難関校対策を行いたい方は「発展編」にも取り組めるとよいですね。
「発展編」の語彙の中でも、語句の出題が難しい最難関校以外での出題や本文での出現はほとんど見られない語句もあれば、それなりに見かけるものもあるので、受験校や状況に合わせてうまく活用するのが良いでしょう。
意味の関連づけが苦手な生徒さんには、別の書籍をおすすめすることもあります。
たとえば「愛」という漢字のコアのイメージがあったとき、「愛おしい」「愛らしい」「愛くるしい」が似ているということをうまく推測できていない、というケースです。
こうしたお子さんには、巨匠・金田一秀穂先生監修の『新レインボー 小学類語辞典(オールカラー)』での学習がぴったりです。
非常に細かくジャンルわけされていて、似た意味の言葉がずらっと並んでいるので、言葉の意味のイメージをふくらめるのが苦手な方には、大変効果的な学習になると思います。
ただ、あくまで類語辞典なので、中学受験対策の暗記に特化しているものではありません。
中学年の方でじっくりと言葉のイメージを醸成していきたい方などに向いていると言える書籍です。
ただいま挙げさせていただいた2つの書籍は本当に素晴らしい書籍なのですが、どちらも収録語句が多いので、
「持っているけど、なかなかすべての語句は覚えきれないから重点的な学習をしたい」という方や、
「どうしても、語句学習にそこまで時間を割くことができない」という方もいらっしゃると思います。
また、この記事の公開時期はまだ入試時期から遠いですが、秋や冬頃にこの記事を読んでくださった方の中には、
「どうにか短期間で重要語句を覚えさせたい」という方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方に読んでほしいのが次の対策です。
3.重要語句の優先度を意識する
同じ「中学受験で出題されると言われている三字熟語」でも、「典型的」を知らないのと、「居丈高」を知らないのとでは、テストでの困り度がまるで違います。
でも多くの場合、どちらも同じ温度感で勉強してしまいがちです。
もちろん全体を一通りさらうことは大事ですが、特に重要な語句については2周目・3周目の学習が欠かせません。
また、どうしても時間がないときには、収録語彙の多い書籍をひたすら学習するのではなく、頻出語句に絞って効率よく学習することが大切です。
そこで、重要語句の2周目や3周目の学習や、短期間で優先順位をつけて学習するのにぴったりな教材を2つご紹介します。
まず、物語文に欠かせない「感情語」の強化には、中学受験専門塾ジーニアスの松本亘正先生の『合格する国語の授業 得点アップよく出る感情語&パターン編』がおすすめです。
物語文の失点理由として非常に多いのが「感情語の理解が不十分だった」というものです。
収録されている感情語の数は100個で、厳選された重要語句を細かな解説と合わせて学習することができる良書です。
ちなみに、語句学習の話ではないですが、『合格する国語の授業』のシリーズは4冊とも大変素晴らしい本で、かつ非常に読みやすく、数時間読むだけでも大きく国語力を伸ばすことができる教材なのではないかと思っております。
説明文によく出る語句の学習におすすめしたい教材は、本記事の最後で紹介します。
4.多くのコロケーションに触れる
「ため息をついた」とは言うけれど、「ため息をだした」とは言わない。
「首を傾げた」とは言うけれど、「首を倒した」とは言わない。
こうした「言葉のつながり」のことを、「コロケーション」と言います。
四谷大塚の組分けテストでも、このコロケーションを理解していることで解きやすい問題がよく出題されています。
たとえば2026年の第1回組分けテストでは、6年生で「[ ]なふるまい」に「利己的」を、5年生なら「[ ]して」に「終始一貫」を選択して入れる問題が出題されていました。
上記では省略していますが、もちろん[ ]の前にもヒントはあって、文脈で解くことができるのですが、コロケーションで解くというのも解き筋の1つです。
どちらも、その他の選択肢は、コロケーション的に「~なふるまい」「~して」とは言わないものだったので、これも合わせて使うことができれば確度があがります。
ちなみに、実際のテストでは「[ ]して」の問題で「終始一貫」以外の選択肢を選んだ生徒さんに、授業の解き直しで「して」に続くことに注目して考えてみるというアプローチもあるとお伝えしたところ、ばっちり正解してくれたというケースもありました。
また、読解問題でも同じです。
以前の、四谷大塚のテストに「[ ]を欠く」の空欄に当てはまる言葉を答える問題がありました。
この問題を解く際、わたしは一瞬で本文にある「冷静な判断」というフレーズ(正答です)に引き寄せられました。
なぜなら、「冷静な判断を欠く」というコロケーションを知っていたからです。
また、穴埋め問題では、空欄のまわりにある小さな手がかりも見逃せません。
たとえば「[ ]な」とあれば、空欄に「特殊」は入りますが、「独自」は入らない。
反対に、「[ ]の」に「独自」を当てはめるのはしっくりくるが、「特殊」はしっくりこない。
たった1文字の「な」と「の」の違いだけで、入る言葉の候補がかなり絞られます。
こうした感覚も、例文をたくさん読む中で自然と身についていくものです。
コロケーションは、意味を覚えるだけでは身につきません。
どれだけ多くの「使われ方」に触れてきたかが、ものを言うのです。
だからこそ、一語につき1つの例文ではなく、複数の例文に触れる機会を作ることが大切だと思います。
5.語句を覚えたかどうかを管理する
先ほどもお話ししましたが、言葉を学ぶためのテキストを1周するだけでは、すべての語句を身に着けることはできません。
一度は完璧に覚えたとしても、時が経てばある程度忘れてしまうものです。
それにもかかわらず、言葉の学習でテキストを1周したきりでは、一度覚えた語句を忘れていても、それに気づかないままになってしまいます。
だからこそ大事なのは、「忘れること」を前提にした仕組みを作ることです。
・覚えているかどうかをチェックすること
・1ヶ月後や1年後に、もう1度取り組むこと
こうした反復の仕組みがあるかないかで、語句の定着率はガラッと変わります。
語句の習得状態を管理できているかどうかが、長期的な定着に大きく影響するのです。
6.問題演習の質と量にこだわる
語句学習用のテキストは、問題演習量が少なかったり、比較的簡単だったりすることが多いです。
たとえば四谷大塚の『漢字とことば』は、語句の一覧と基本的な問題がセットになっていますが、「1~5に当てはまるものをア~オから選ぶ」といった問題では、それぞれの選択肢の内容が大きく異なることから、ふわっとした記憶でも正解できてしまうというものが多いです。
同じレベルの簡単な問題には対処できますし、最初の一歩としてはよいのですが、それだけで「語句を完璧に覚えられている」と思うのはあまり良くないでしょう。
またこのような問題は、消去法で解けてしまい、実は覚えていなくても正解にたどり着けてしまうこともあるので注意が必要です。
そして、語句一覧に載っているすべての語句が問題で網羅されているわけではありません。
『漢字とことば』の語句の問題が掲載されている早稲田アカデミーの『練成問題集』に取り組むというのも1つですが、問題演習だけでなく、語句一覧のページも活用するのが一番手厚く学習できます。
たとえば、単語帳に入れたり(デジタル単語帳の「Anki」を使うのもその手段の1つです)、語句を赤ペン、意味を緑のペンで塗って、赤ペンは緑のシート、赤ペンは緑のシートで隠したりといった工夫で、一覧のページもしっかり覚えることができます。
ただし、これはテスト対策としてはよいのですが、永続的な学習に用いるのはあまりおすすめしません。
なぜなら、『漢字とことば』のことば一覧はあまりに膨大ですし、語句から意味を問う形では正誤が分かりにくく、意味から語句を問う形では複数の解答がありえたり、難易度が高すぎたりするからです。
また、後者の場合は「このページの、この辺に掲載されていた言葉」という覚え方をしてしまうこともあります。
限られたテスト範囲の学習としては有効ですが、語句を永続的に使えるものにするための勉強には向いていません。
問題がある程度難しく、またバリエーションが豊富であること。
これが、語句の暗記を「本当にテストで使えるレベル」に引き上げるために欠かせない条件だと思います。
7.学習にメリハリをつける
最後に。
勉強には、頭をフル回転させる学習と、そこまで負荷がかからない学習があります。
たとえばテストや過去問の学習は、完全に集中して取り組まなければならない。
これは本当に気力・体力を消耗する学習です。
それ以外にも、算数の難問や国語の読解を解く際は、かなり頭を使うでしょう。
それと比べると、暗記は比較的リラックスした状態で学習できると思います。
この3段階を「すごく重い」「まあまあ重い」「普通」とすると、「軽くて楽しい」という4段階目もあって良いと思うのです。
受験の最終時期は特に長時間の勉強が必要になりますが、だからこそ、その中にちょっと気楽な時間を挟むことが持続力につながります。
わたし自身の中学受験では、漫画や音楽、クイズなど、楽しみながら学べる教材をフル活用していました。
「軽くて楽しい学習」を重い学習の合間に挟むことで、息抜きをしながら力をつけることができます。
語句の学習も、教材次第で「楽しく学ぶ」ことができる分野だと思います。
対策方法を意識して作成したオリジナル教材について
この7つの対策方法をふまえて作った教材が、Webコンテンツの「小学生が覚えたい重要語句の例文クイズ」です。
この記事で挙げた7つのポイントとの対応を簡単にまとめます。
「1.文脈の中での使われ方を知る」&「4.多くのコロケーションに触れる」
「例文クイズ」では1語につき複数の例文に触れられるようになっており、例文を通じて、文中での使われ方や自然な言葉のつながりに、繰り返し触れられる仕組みになっています。
コロケーションや使い方にはかなりこだわって作っていて、2026年3月の6年生の組分けテストで言うと、「利己的なふるまい」という語句のつながりや、「かぜの典型的な症状」という使い方は、テストで出題される前に適切な使い方の例文として作成しており、手前味噌ですが、ずばり的中させていました。
「2.ジャンルごとに学習する」&「3.重要語句の優先度を意識する」
『予習シリーズ』やテスト、最難関校以外の入試問題を徹底的に分析し、実際に「読む・解く」ために必要な重要語句を本気で厳選しました。
本日リリースの「語句①」では説明文の読み・解きにおいて非常に重要な50個の語句を学習していただけます。
選択問題での出題も多い「○○的」という言葉や、「前者」「後者」をはじめとした本文理解に欠かせない言葉を、学びを深めやすい順番に並べて収録しました。
次にリリースする「語句②」は、「アイデンティティ」など昨今の入試で出題されやすいテーマの理解に欠かせない語句を中心に構成する予定です。
「5.語句を覚えたかどうかを管理する」
「例文クイズ」では、自分で付け外しができる「覚えた!」機能により、未習得のものだけに絞って学習することが可能です。
一度覚えたつもりでもテストで間違えたら「覚えた!」を外すといった運用ができ、忘れることを前提とした着実な管理をサポートします。
「6.問題演習の質と量にこだわる」
語句の習得に向け、「学習」「確認」「テスト」と段階的に取り組める構成になっています。
「例文クイズ」では語句1語に対して正解3種類、不正解7種類の選択肢を用意し、消去法では解けない形式にしました。
正解の選択肢はもちろん、不正解の選択肢についても、勘違いしやすい意味や入試のひっかけを意識し、指導経験に基づいて1つ1つこだわって作っています。
「7.学習にメリハリをつける」
ミニバトルモードや、30日後に解放される「スペシャルワードボス」など、ゲーム感覚で反復できる要素を取り入れました。
スマートフォンやタブレット、パソコンなど、どのデバイスでもログインできるため、場所を選びませんし、楽しく学べる仕様になっているので、塾の行き帰りや勉強の休憩などの隙間時間にも学習していただけます。
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このように、こだわり抜いて作成した「例文クイズ」。
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「聞いたことはあるのに!」が「知ってる!わかる!」に変わる瞬間を、皆様に体験していただきたいと思っております。
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